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July 30, 2005

老人に席を譲れないボーイスカウト

通夜と告別式の関係は、地域によって大きな違いがあるようです。通夜に一般の人も来られる地域があると思えば、松本周辺では、通夜は親戚などの本当の近親者で執り行うようです。

今回の葬儀もその通りで、通夜は20人くらいの近親者で自宅で行いました。

菩提寺の正麟寺の宮澤住職に丁寧な読経をおこなって頂けました。また、節回しをつけた御詠歌を尼さんと一緒に詠い、そのもの悲しい旋律が遺族の心に響きました。「諸行無常」の内容が詠われているのが分かりました。

(諸行無常)
読経の後で住職から講話がありましたが、仏教では、世俗のうつろいやすい価値観を超越し、何時の世にあっても変わらぬ真実を人々に語っていると言っておられました。「今日までは正しいとされた価値観が明日には全く逆の評価をされる。前に進めと言われたら今度は後ろを向けと。そういうことは世俗の世界ではよくあるが、仏教では2000年以上にに亘って続く真実を伝えている。」と。この指摘には、少し耳の痛い思いもしました。

「諸行無常」はその絶対真理の一つなのでしょう。

以前、渡辺照宏著の「お経の話」を読んだことがありましたが、「諸行無常 是生滅法 生滅滅己 寂滅為楽」(諸の行は無常なり これ生滅を法となす 生滅にして滅しおわらば 寂滅して楽となる)という般若経の一部の漢訳文があると書いてありました。この漢訳文の意味を今様歌に作ったのが「いろは歌 = 色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず」で、一般的には弘法大師の作と伝えられているものの、七五調のいわゆる今様歌は大師の時代よりもずっと後の成立、と渡辺さんの本には書かれています。

ところで、通夜の講話の中で、住職から、岳父は生前得度を得ていたとおっしゃっておられました。私は知りませんでしたが、岳父は信心深かったのです。得度に至るには、それなりの修行が必要なようです。勿論出家修行ではなく、在家修行ですから、無理な修行は出来ません。

(六波羅密)
住職によると、仏教では、いろいろな欲望や迷い悩み多いこの現実世界を「此岸」(しがん)と、苦しみのない理想世界を「彼岸」(ひがん)と教えるのだそうです。迷いの此の岸を去って悟りの彼岸に渡り達するという意味なのでしょう。その修行の代表的実践行為が、「六波羅密」で、「向こう岸へ行く6つの方法」があるということになるようです。その6つの方法とは、布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧なのだそうです。

住職は、このうち、布施と持戒について話をしてくれました。

「お布施」というと、お坊さんの読経のお礼に渡すお金、という印象がありますが、本来は執着心を外すところに意味があるようです。従って、例えば、自分の所有物を分け与える、つまり自分のものだと、と思ってぐっと握っている手を離すことでそれが執着を離れる実践となる、ということなのだそうです。

持戒に関しては、「戒」というと、遵守すべき決り事という感がありますが、仏教の「戒」は、むしろ「習慣づけ」といった意味合いが強いのだそうです。戒を守るのではなく、自分が戒に守られている。戒を守ることは、自分が戒に助けられていることだ、と考えるのだそうです。釈尊の戒めをまもり、清らかな心を保つことで、平和な生活は持戒の徳の上に築かれていくものだということになるのでしょう。

布施をするのでも相手を害さないという持戒の精神がないと、善意の押しつけ、自己満足の行為になってしまうのだそうです。

以上、通夜の席で、40歳過ぎの若い住職ではありましたが、時間も沢山あったこともあり、普段接することの出来ない精神性の高い話を伺う機会になりました。

(二つの正麟寺)
通夜の講話の後、食事をしながら住職に更に曹洞宗の話や最近の仏教界を巡る議論なども伺いました。

そもそも曹洞宗には本山が二つあり、道元禅師が開かれた永平寺と瑩山禅師が開かれた總持寺がそれなのだそうです。道元禅師を「高祖」と、曹洞宗を全国に広められた瑩山禅師を「太祖」と仰ぎ、現在では、全国に約15,000の寺院と、1,200万人の檀信徒を擁しているのだそうです。

ところで松本の正麟寺は、元々は梓川村の金松寺から分かれたのだそうです。その金松寺は、安曇の私の本家の菩提寺です。ところが、明治維新の廃仏毀釈でそれまでの密接な繋がりが途絶えたという話が住職からありました。最近では、また曹洞宗のネットワークを復活しつつあるようです。

松本の正麟寺には、松本藩主の小笠原家が代々墓を持っていたのですが、古河に移封された際に、古河に新しく正麟寺を作り、お墓も持っていったという話も伺いました。古河には確かに別の正麟寺があり、幕末の知識人兼行政官で著名な鷹見泉石の墓で有名です。渡辺崋山の「鷹見泉石図」は国宝で、我々が習った日本史の教科書に載っていました。

(精神世界の充実)
住職の話では、イスラム教やキリスト教に比較し、仏教は「闘いに弱い」という認識があるようです。確かに仏教の世界には、一神教とは異なり、「しのぎを削る」という面がないのかも知れません。それでもインド発の仏教が東は日本で止まってはいけないということで、曹洞宗で共同して、「アメリカ禅センター」という施設を米国西海岸に作っているという話も伺いました。

精神世界の面でも、いろんな活動が展開されているのです。お葬式やお盆・お彼岸だけの世界では無いようです。特に、日本人全体の思いやりや道徳心といったものが劣化している中では、精神世界の充実が更に求められているような思いもします。

(老人に席を譲れないボーイスカウト)
実は、通夜の日、松本から安曇の実家に行く途中、大糸線の中でショッキングな事案に接しました。名古屋からボーイスカウトの一団が電車に乗って、これから行くキャンプを楽しみにしているようでした。車内は大糸線にしては込み合っていました。そこに80過ぎの老夫婦が乗ってきました。私は席に座っていたので席を譲ろうとと思ったのですが、元気な若者がいっぱいいるので彼らが当然席を譲るものと思って見ていました。しかし誰も譲ろうとしません。ボーイスカウトの指導者も何も言いません。そこで私は、先ず自分の席を老婦人に譲った上で、ボースカウトの指導者の方に、「ボーイスカウトなのだから、子供達に席を譲るようにお話しをされたら如何ですか」と話しかけました。

その指導者の方は、「子供達は名古屋から普通電者に乗ってきて疲れています。代われとは言えません。」との返事が返ってきました。しかもその指導者の方は、席に座ったままです。

私はそこで、「ボーイスカウトの活動趣旨は何なのですか。お楽しみ会ですか。それとも社会奉仕ですか。」と問いました。指導者の方は、そこで初めて、席を起ち、「済みませんでした。」と子供達に席を詰めるように言って、やっと老いた旦那さんの方も座ることが出来ました。

ボーイスカウトですらこのような実態です。大糸線の中には、他に若い人が沢山席に座っていましたが、誰も席を譲ろうとはしませんでした。

いまでは何も驚くべき事象ではないかも知れませんが、一体、日本の国はどうなってしまっているのだろうかと、本当に不安に思えます。安易に人を信用する老人をターゲットに悪徳商法が蔓延しています。

若い人も、多分言われればやるのでしょう。しかし、自分で率先してやろうという意識はどうもないようです。都会でも、若い人が電車の席を占拠し、老人が疲れ果てた表情で立っている光景を何度も眼にします。

これは義務教育の問題なのか、道徳というもっと幅広い社会教育の問題なのか分かりませんが、曹洞宗の若い住職の話を聞くにつけ、精神世界の位置づけの重要性を感じた次第です。

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Comments

今更この記事に関してのコメントを書いて申し訳ありませんが、どうしてもお伝えしたい事が御座いましたのでコメントさせていただきます。
「老人に席を譲れないボーイスカウト」の記事に関してですが、私はこれを呼んであなたに関心するより愕然としました。
ボーイスカウトに人に親切にとの掟のようなものがあります。
その観点から言えば、彼らに配慮の意識が欠けていたといえましょう。
しかし、忠告を行ったあなたにこそ問題があるのではありませんか?
「彼らが当然席を譲るものと思って見ていました」と言うような考えがあるから誰も席を譲ろうとしないのです。
後に貴方が率先して席を譲ったことは見習えます。
しかし、そんな貴方にさせ心の中に落とし穴があるのです。
「誰かが」と言う考えを無くし、自らが率先して行く事こそが重要です。
そうして行けば、周りの人も自ずと学び、実行して行く事でしょう。
道徳も、風に漂い日々変わる流行のようなものです。
しかし、どんなに強い風にも、人一人が立ち向かえば、後ろに人がつき易くなります。
大きくなれば、風の向きもかえられます。
誰かではなく、自らが行動することが一番大事なのです。

Posted by: 若者 | September 03, 2007 at 08:01 PM

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