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June 28, 2005

ロビン・ボードウェイ教授の講義

6月28日の夕方、「財政的地方分権と財政調整制度の役割」と題するカナダ・クィーンズ大学経済学部教授 ロビン・ボードウェイ氏の講演を聞く機会がありました。

この講演は、私どもの勉強会の主催で霞ヶ関界隈で執り行われ、役所の関係者だけでなく、在京の研究者なども参加して行われました。英語での講演なので、筆者の外国語能力では十分理解できたとは到底言えませんが、幸いレジュメがあったので、何が語られているかは、かろうじて理解できました。

教授の講演は、多層性統治機構をもつ国家における地方分権を進める上で、財政調整制度が果たす役割について論考しようとするものでした。

教授の理論は、カナダのような連邦制国家だけでなく、日本のような単一性国家も適用対象とするものという前提の立論でした。

教授によれば、財政的責任の地方分権は、地域的な公共サービスをより効率的に供給する方向に導くものと考えられるが、これは、国家よりも地方政府のほうが、より地域のニーズや選好に応じてサービスを提供できること、地方政府の方が、地域の事情や労働市場について、より多くの情報を有していることから導かれる論理的帰結だ、とのことです。

地方分権は、また、地域的な説明責任を向上させ、行政サービスの供給に関し実態に即した改革をもたらし、また、地方自治体に対して、一定の自律性ないし規律を科すことにつながることになりますが、その結果、多くの国で、教育や福祉・衛生といった根幹的な分野において、類似した公共サービスが地方分権化されていると論証されておられます。

一方で、歳出分野の地方自治体の責任が、歳入面(税収徴収面)に比べて、より地方分権化されることから、垂直的な財政ギャップが生じることもまた一般的であると論証しています。

そして、この垂直的な財政ギャップは、一般的には、財政調整制度ないしは個別補助金の組み合わせによって、埋め合わされることとなると結論づけます。

しかしながら、地方分権は、より効率的な行政サービスの提供をもたらす一方で、様々な態様の非効率や不公平をもたらす側面があり、そのことは、そもそも、地方分権が、財政力や税源、財政需要が異なる地方政府に対して、権限・責任を付与しているということから生じるものと論じます。更に、分権化された意思決定の仕組みが、利便性のスピルオーバーや租税の引下げ競争など多様な形での財政の外部性をもたらす可能性も指摘しています。

結果的に、これらは、国民経済に対し、非効率と不公平をもたらすものと考えられることから、国家としての再分配政策の目標ないし水準を達成するために根幹的な政策手段の一部を、住民に身近なレベルの政府に移譲する場合には、中央政府は、その公共サービスの提供の仕方に関し、関与をしようとする傾向があると、指摘しています。

財政調整及び個別補助金から構成される地方財政制度は、中央政府が、いずれにしろ発生せざるを得ない様々な形の非効率と不公平を緩和しつつ、権限移譲等の分権化を、円滑に進めるための手段の一つであると考えられる、と結論づけています。
 

以上のような、整然とした「セオリー」を展開される講義でしたが、ボードウェイ教授は、各国の政府間財政調整制度を一般理論として理論づけた国際的権威なのだそうです。その席にいらした別の大学教授が、「ボードウェイ教授はノーベル経済学賞候補」だという話をされていた、と後で伺いました。皆で撮った記念写真の価値が出るかもしれません。

講演の後の質疑で、同じ北米の連邦制ながら、米国とカナダでは財政調整制度の有無を始めとして、随分と仕組みが異なっているように思うが、との質問があったのに対し、教授からは、カナダは確かに地理的には北米にあるが、制度的にはヨーロッパ大陸に近いこと、したがって社会保障もしっかりとし、財政調整制度もあり、国民福祉をそれなりに構築してきたこと、しかしながら米国との密接な経済関係の中で最近は市場経済化、税率引き下げ、結果的に社会保障水準の引き下げといった米国からのプレッシャーに曝されていること、という事情の説明がありました。

ボードウェイ教授の感覚は、私どもの職場における、財政調整制度を運営し、地域間の不均衡を是正しようとする感覚に近いものがあるように感じました。

教授は、カナダに於けるこの分野の大御所的存在で、今後とも継続的な情報交換が出来れば有り難いと感じたところです。地方分権への展望を再認識できたような気持ちになりました。

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