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May 22, 2005

首長さんの教育改革議論

5月21日の土曜日に、愛知県の長久手町で、「全国首長連携交流会」という会合に参加してきました。

10回目を数える交流会ですが、毎回会員の首長さん達が自主的に集い、テーマ毎に行政改革、合併、教育、医療・福祉、農業・農村、環境といった分科会毎に議論を行い提言を行っていくという勉強会です。

この交流会では、これまでも、教職員の人事権を都道府県から市町村へ移す、介護予防を介護保険の適用対象にするなどという提言を早い段階から行い、それが現実的に国の施策に反映されつつあります。

私は一昨年有明のビックサイトで行われた会合に参加しましたが、今回は、三位一体改革、市町村合併後の自治体経営、教育改革などの話題もあるということで、お誘いを受け参加することにしました。朝6時半の新幹線で眠い目をこすりながら出かけました。

私は、教育部会に参加することにしました。森民夫長岡市長、石田芳弘犬山市長、森真各務原市長、松崎秀樹浦安市長、江里口秀次佐賀県小城市長、横田耕一稚内市長、渡辺幸子多摩市長、赤松達夫兵庫県稲美町長、板倉弘国茨城県友部町教育長、長門俊男大竹市教育長といった面々のグループに入って議論に臨みました。

文部科学省の初等中等教育局の課長さん達も資料持参で参加し、私も加わっての議論が、一瞬「呉越同舟」のような雰囲気になりましたが、会議の中身は、教育現場を抱える市町村の教育重視の姿勢とそれに見合った権限と責任を基礎的自治体に委ねるべきだという方向の議論に自然に収斂していきました。

先ず、多摩市の渡辺市長と浦安市の松崎市長からは、正反対の状況の紹介がありました。多摩市はベットタウン全体が高齢化し、市内の小中学校が少人数化し、1学級しかない学年が多くなり、学校統合をやって行かざるを得ない状況がある一方、浦安市は一年で人口が3千人増えるなど、小学校・中学校の新築という課題が浮上しているということでした。まちづくりも、同世代が一挙に増える団地造成は考えもので、何事も段階的に考えないと、あとあと問題が残りかねないという事例紹介でした。

各務原の森市長からは、採用、人事、給与負担全てを市に降ろすこと、町村は広域的な組織で教育行政を管理し、双方を人事交流でつなぐことが必要であること、義務教育の現在の仕組みは、学校設置と身分(市町村)、採用と給与負担(都道府県)、国庫負担(国)と権限と責任が分割されており責任の所在が不明確となっていること、などの指摘がありました。これ対しては、殆どの首長さん達は基本論として賛同されていました。

ただし、長岡市の森市長が、世間から見ると、本当に市町村長に人事権までも降ろした場合に、情実人事などの弊害を心配する声があることなどに対する答えを用意していくことが不可欠であるとの指摘がありました。

犬山市の石田市長からは、総合学習の時間は非常に大事で、この国=Land、つまり「山川木草」を大事にするという発想を重視する立場から、総合学習のような時間を何としても確保することが重要で、中山文部科学大臣が、国家有為な人材を作るという発想から詰め込み教育を復活させようとしているとの報道があるが、それが事実としたら、それは間違った考えである。国を大事にするということは、国家体制というようなバーチャルなものではなく、Landを大事にするということだ、という御本人の理念に基づく熱弁が披露されました。その上で、政府には、どうも「地方に任せるとどうなるか分からない」として、国に権限や財源を抱え込むという気持ちがどうしてもあるが、地方に委ねて住民がチャックするというシステムこそが、民主主義の基本であるはず、というポイントを強調されておられました。

犬山市長のこの指摘が、長岡市長の問いかけに対する答えなのですが、私の方からは、一言、国から地方への権限と財源の移譲に従って、自治体の責任が重くなる分だけ、ますます透明性の確保、情報公開が求められ、それに向けての制度的対応は当然必要である、と申し上げ、前のスウェーデン大使の藤井威さんから伺ったスウェーデンで地方分権を強力に進めてきている真の理由、すなわち、スウェーデンですら政治家や役所を信頼していないからこそ、行政経費を削減し、役人を監視する観点から、身近なところでチェックが利く地方自治という手段を選択してきている、という考え方をご紹介申し上げました。

地方自治も失敗するけれど、自治体は分散し、多様なだけに、その回復が早い。中央集権体制で大きく失敗すると日本中が失敗して被害は大きくなる。教育行政も含めて、これまで国が失敗しないでそんなに良くやってきたのでしょうか、と敢えて申し上げました。

稚内市長の横田市長からは、教員が稚内に定着しない現実、超多忙な教員の実態などに関する切実な思いが吐露されました。その上で、教育現場をサポートし、教職員が教育に専念できる体制が欲しいとの提言もありました。浦安市の松崎市長からは、周囲の首長の話を総合すると、不適格教員が3割くらいはいるのではないかとのお話があり、教員試験に受かった正規の教員よりも、試験には失敗したものの非常勤教員として学校現場で信頼感を勝ち得しっかりやってくれている人が多々おり、このような人物を見極めるステップ、いわばインターン制とでも呼べるような制度を採用すべきではないか、試験だけでは人物は見極められない、という指摘がありました。

稲美町の赤松町長からも同趣旨の指摘があり、県教委が非常に堅いという問題を指摘されておられました。教員関係者の中で教員人事を取り仕切る慣行が、現場の市町村長さん達には侵しがたい「聖域」に映っているようでした。

小城市の江里口市長は、良い先生を採用するのがその地域の願いなのだが、市町村教委の教育長の力関係で、良い人が来たり来なかったりする現実があり、市長に人事権があればそうはさせない、との切実な願いを語っておられました。

いずれにしても、参加された首長さん方は、住民の理解を得ていくためには、教育に関する分権を更に進めるとこんないいことがあるのだという分かりやすい実例を、首長自ら作っていかないと今の現状は崩せないという問題意識を共有し、この会として、中教審にものを申していくつもりで、8月中旬の提言取りまとめに向け、継続作業を進めることになりました。

実践経験を積み、問題意識を持つ首長さん方の討論は、地に足のついた議論だと感じました。霞ヶ関の我々も、このような場にもっと入り込む必要があると認識しました。

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