« 弱肉強食と人々の善意 | Main | 航空写真で見る終戦直後と現在の東京の対比 »

March 11, 2005

豊島・直島の産業廃棄物処理の現場

3月10日、香川県の豊島と直島に行ってきました。豊島の産業廃棄物不法投棄の事後処理の進展状況を確認するためでした。豊島の産廃問題とは、瀬戸内海の小島・豊島に60万トンの産業廃棄物を業者が不法投棄し、不法投棄者本人と共に香川県庁も公害調停の被申請人となったものです。

地元住民の反対にも拘わらず、産廃事業を許可した県庁が、結果的に、許可の条件であった事業が適正に行われているかのチェックを怠り、住民が心配したとおりの不法投棄が行われ、土壌は重金属にまみれ、海は汚染され、島の子供は野焼きの黒煙で喘息になり、住民の県庁への不信感は拭いがたいものとなりました。

中坊公平氏が弁護団長になり、全国の注目を浴びる事案となりました。豊島では、廃棄物対策豊島住民会議議長砂川三男さんからも、住民運動の経緯について淡々とした話を伺うことが出来ました。

県庁の廃棄物対策課の考えで、県庁からの説明だけではなく、住民の声も聞いてもらいたいとの配慮で実現した機会でしたが、一時は相対立していた県庁と豊島住民団体が、今は、過去の因縁を超えて環境問題に協働の取り組みをしているように見受けられました。

不法投棄された60万トンの産業廃棄物は、船で直島に運び、そこで高度溶融処理を行っています。ダイオキシンも高温乃至科学的方法で無害化されていました。最後に出てくる溶融スラグは公共事業の材料に活用され、溶融飛灰は、水と混合し泥状にして隣接する三菱マテリアルの再資源化施設で銅などの有用金属を回収しています。この事業の概要は、以下のリンクで見ることが出来ます。
http://www.pref.kagawa.jp/haitai/teshima/

10年間で60万トンの産廃を処理し尽くす計画ですが、総事業費は500億円と見込まれています。当初の対応ミスが、結果的に膨大な税金投入という事態を招いたのです。

香川県庁の展示施設には、ことの経緯が年表で記されています。住民団体の自主的施設もあり、そこにも年表がありました。県庁の展示施設の年表には、不法投棄を行った事業者の固有名詞が記されていませんでした。刑事事件となり罰金と執行猶予がついた懲役判決を受けたものの、その方の人権に配慮したとの説明でした。住民団体の展示施設には、固有名詞が記されていました。不法行為により500億円の税金投入を招いた張本人の名前を明らかにしない人権感覚は、私には理解できませんでしたが、県庁の方々は、とても慎重でした。

三菱マテリアルが所在する直島は、豊島から高速艇で15分くらいの距離の島です。島の北の端に、マテリアルの精錬所があり、その敷地内に中間処理施設が設置されています。巨大な化学プラントです。県庁から派遣されている合田所長の説明を伺いましたが、三菱マテリアルの事業規模縮小の中で、中間処理施設を誘致することで、マテリアルの規模縮小の影響を少しでも食い止めたいとの直島町当局の思いも相当あったようです。

精錬事業が盛んだった頃は、8000人の住民を数えた直島町も、今や3000人台に減っています。このままではじり貧だと、町も起死回生の対応をしたようです。三菱マテリアルも、溶融飛灰から有用金属を取り出せるというプラント連携も可能になり、また、中間処理施設運営にマテリアルから人を派遣(28人)することにより、その分の新規雇用も可能になったようです。

直島は、足尾銅山と同じように、亜硫酸ガスの影響で、精錬所付近の山は禿げ山になっています。精錬所受け入れの経験のある地域だから、中間処理施設受け入れも大きな抵抗感が無かったように思えました。島民の多くは今でも三菱マテリアルの関係者で、雇用確保や地域経済の今後に対する意識が高いのだそうです。

豊島も直島も、小さな島だとは言え、島の大部分は風光明媚な自然に恵まれています。産業廃棄物で有名になってしまっていますが、自然はなお豊で、海水浴場は大いに賑わっています。産廃問題の解決方策を見出し、エコタウンとしての再生を目指しています。直島町の濱田町長、中林議長の話には、生き残りをかける執行責任者の意気込みを感じました。

私のところの仕事として、この事業に対して、地方財政措置を行っています。そのような立場で、今回現場を訪問することが叶いましたが、いつものことながら、現場には真実があるとつくづく思います。

ところで、香川県庁の方の話では、この事業者の方は、もともと豊島に産廃を持ち込む以前から、島の西端の土地からケイ砂を採掘し、中国自動車道の盛り土として供給していたのだそうです。大規模な採掘後山が無くなり、大きな穴が明き、平らになった土地の「有効利用」を考えたときに、関西方面からの廃棄自動車などの産廃を引き受けることを考えついたのだそうです。自動車スクラップ業界も違法投棄に繋がることを知りながら、対応を任せたようです。

もともと、この事業者の行動に不信感を抱いていた豊島の地元住民は、産廃事業の許可申請が県に出されたときに、猛烈な反対運動を行ったのだそうです。法律上の要件を満たしていれば、許可しなければならない、との講学上の「許可」に関する「行政法の理論」の元に、当時の環境保護法制の未熟さの中で、県庁は、「事業者の行動を監視する」との約束のもとに、許可を行ったようです。私は、その昔、キリストがパリサイ人の教条主義を批判した聖書の記述を思わず連想しました。

しかし、その後の推移は、地元住民が心配した以上の最悪の展開になったのです。

世界に目を転じると、高度成長に邁進する中国では、同様の問題が生じています。ロシアでは、核兵器、化学兵器や原子力潜水艦が放置されている状況もあります。

日本の豊島廃棄物は、そういうものと比べると、極端に厳しい対応を行政が自らに課しているもののようにも思えますが、この実例はいずれ世界が手本とすることになるだろうと、確信しています。

クボタが、豊島と直島のプラント建設と運用を一括受注して、今や環境ビジネスの分野のパイオニアとなりつつあります。今回のプラントの要求水準が極めて高く、失敗のリスクを恐れ、入札への参加を逡巡する企業が殆どであった中、唯一入札に応募したのがクボタだったそうです。クボタの焼却・溶融技術部理事の阿部清一氏が、その技術開発を先導しておられるという話も県庁の方から伺いました。将来のプロジェクトXの候補かもしれません。災い転じて福となす、という側面もあるのです。

|

« 弱肉強食と人々の善意 | Main | 航空写真で見る終戦直後と現在の東京の対比 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/58165/3252466

Listed below are links to weblogs that reference 豊島・直島の産業廃棄物処理の現場:

« 弱肉強食と人々の善意 | Main | 航空写真で見る終戦直後と現在の東京の対比 »