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March 30, 2005

英国の教育改革

2005年3月29日に開催された中央教育審議会の義務教育特別部会で、国立教育政策研究所小松郁夫教育政策・評価研究部長から英国の教育改革の現状について貴重なお話を傍聴する機会がありました。

話の趣旨を損なわない形で以下のようにまとめてみました。日本とは異なり、地域ごとにばらつきの大きい公立義務教育学校の運営に関して、英国がどのような取り組みを進めてきているのか、進めようと考えているのか、貴重なお話を伺う機会になりました。

(英国の教育改革と日本への示唆)
・ 英国では、教員の給与も学校単位で決める。学校理事会で予算を決めている。1000万円の教員を1人雇うのか、500万円の教員を2名雇うのか、学校理事会に決定権がある。現在は英国の人件費の高騰で、学校側にとって採用状況が厳しい状況にある。
・ 各学校で経営努力を果たそうとしている。単年度の赤字は銀行借り入れで凌いでいるという現状もある。
・英国の教育改革は、元々労働党のキャラハン首相が主唱し、歴代の内閣に引き継がれてきている。
・ 英国は、もともと校長を志望する人がいて30歳台で校長になるところ。10年20年と校長をやっている例も沢山ある。幹部教員養成システムが存在し、校長になる前となった後の研修も用意されている。ICTを使った研修プログラムも用意されている。
・英国と日本は合わせ鏡のようなもので、お互いに相手のことを良いと思っているふしがある。英国は、日本の学習指導要領と検定教科書がすばらしい、と羨ましがっている。一方で英国は、地域間格差、教員の低い待遇が大きな問題となっている。日本の側では、国が教育改革に乗り出していることに注目している。
・アカウンタビリティーが教育改革のキーワードとも言うべきもの。教育課程行政と全国テスト、監査、財政システム、に関して触れる中で日本への示唆を試みたい。

(ナショナルカリキュラムと全国テスト、評価)
・ ナショナルカリキュラムの作成と全国テストの実施を行っている。達成目標を測るために全国テスト実施しているが、その結果到達レベルが上がっている。これは資格カリキュラム機構(QCA)が実施している。
・学校監査も行われ、教育技能省から独立した組織の教育水準監査院(OFSTED)が定期監査を行う。260人の勅任視学官のほか5000人の非常勤監査官が動く。教育水準などに関して事後監査を責任を持ってやっている。
・ 勅任視学官は大学教授レベルの水準以上の人が任命されている。非常勤監査官も研修を受けた人がなっている。監査のフレームワークもしっかりしており、機構の勅任視学官によるチェックもしっかりしている。入札契約で監査を行っており、教育学部の教官がアルバイトで入札参加しているケースもある。もとより教育関係者も多いし、教師のOBも多い。
・ 最近は問題のあるところに重点的に監査に入っている。OFSTEDでは年報も出している。学校に対して大変なプレッシャーになっており、当然苦情も出た。そうした事情もあり、最近は必要なところだけをやる傾向になっている。
・ 多様な指標を活用し、各学校の授業の様子が監査評価されている。評価の低い学校は改善命令を受ける。その結果政府による精力的支援の対象になる。「失敗校」が改善されない場合は学校の廃止統合にもつながり、教員も首切りの憂き目にあう。
・ 経営計画を校長に立てさせるのが本来の狙い。学校の自己評価を重視。それに対して外部評価、監査を行うようになっている。評価項目を見ると現状では7割の学校のマネージメントが合格水準とされる結果が出ている。学校の状況を把握した上で、それぞれの実態にあった形で個別指導が行われている。特に困難なところに国がサポートする体制を採用しており、国と自治体と学校とがよいパートナーシップを作っている。
・最近では、英国の自治体ごとの教育格差は、こうした情報の流通によって格差が縮まる傾向にはある。
・「中南米系の生徒の学力が弱い」などの細かいデータを積極的に明らかにし、問題点を分析することで対策が立てやすくなる。生徒に対するインタビューも行っている。
・一方で、校長はナショナルテストをもうやめて欲しい、という声を上げている。これ以上テストの結果を上げるのは無理だ、との声もある。メジャー首相の訴えた「教育、教育、教育」ではないが、「テスト、テスト、テスト」でうんざり、という声も出ている。各学校でも独自の学力テストがあり、子供もがテストに追いまくられている。
・更に、テストに金がかかっており、そのくらいならば教員を増やして欲しいとの声も出ている。テストをやる教科に重点が置かれることに対しての批判もある。広範囲な能力形成をやっていくべきとの意見もあり振り子が戻る動きもある。
・ 教育関係者の中で賛否両論があったことは事実だが、トータルで見ると英国の教育は質的に改善されたと言える。監査も導入当初は学校現場の抵抗があったが、それを経てソフトインスペクションに変化してきたのは予想された効果。

(財源措置の変更提案)
・ 英国では、自治体で日本の交付税に相当する自治体歳入交付金が学校現場にまで行き届かない事例があった。OFSTEDや会計検査などの評価が入った結果、そういう実態が判明した。
・ 一方で、サッチャー首相の時代には、ロンドンの教育委員会が教育に金を使いすぎているといって団体を廃止したこともあった。また、サッチャー時代に、自治体から離脱し国から直接金を貰う自営のスクールになった学校もあった。
・ 他方で、自治体からの助成金以外にも資金を集めて、教育予算を確保した学校もある。多様なのだ。
・英国の義務教育費について、2004年に教育改革5カ年計画を作成し、2005年2月には、自治体歳入交付金を切り分け、全額国庫負担とする政策が発表されている。使い道を教育に限定した予算であり、全ての公立学校の3カ年間の予算を保障する仕組み(学校経営が赤字傾向にあるものを長期バランスさせる目的)、既存の個別補助金事務を簡素化、予算の使い道の裁量を高めるという構想だ。元々の交付税のような一般財源による財源措置を特定財源に振り替える構想になっている。
・この5月の選挙結果を見ないと分からないが、3月の公聴会を聞く限りでは保守党も強い異議はない模様。
・学校現場の声としては、自治体によって教育費支出のばらつきが多すぎて困っているとの声が強い。大きな格差がないような施策をしてもらいたいとの意見が強い。ものによっては4倍くらいの格差の例もある。
・教育現場に財源を交付しない自治体の姿勢が問題視され、国がもう少し責任をもって義務教育に関与していくという流れになっているということだ。

(日本への示唆を三つ)
・公教育の質の保障を行うべき。英国では義務教育の卒業証書はなく、各科目毎に試験を行う仕組み。脱落者も多い。そこで、カリキュラムの改革、ベンチマーク、優れた校長の存在、中間層の教員の改善、アカウンタビリティーの向上、教育関係者だけで学校がマネージメントされないような仕組み、監査制度の活用による介入を行っている。我が国への応用例もある。都立高校重点校への学校経営診断を行っている。東京都の学務部、人事部、指導部の指導主事が協同で指導に入った。三重県の支援例もある。
・地方分権と学校教育に関しては、生じた格差に関して民間の力を借りながら国が責任を持つ制度にすることも必要。
・教育内容と学力保障。若者の無業者対策など。

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