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February 27, 2005

総合的学習の時間と防災教育

私も、仕事としての防災から離れて随分とたちますが、時間の余裕のある範囲で、多少は防災に絡んでいます。現場感覚を失わないために、防災は非常によいテーマでもあります。

2/27に、大手町のサンケイホールで、全国各地の防災教育の事例発表会がありました。私も選考にかかわった20件の取り組みの発表会でした。

小中学校の防災教育の先進的取り組み、ボランティアグループの取り組み、災害医療センターの取り組み、栄養士の皆さんの取り組み、理科教育センターの取り組みなど、創意工夫に富む熱心な取り組みに感心しました。

北海道の理科教育センターの宮嶋衛次さんは、札幌地方気象台や北海道庁などの協力を得て、地震と津波に関する児童生徒用資料と教師用解説資料を作成しています。防災教育をしようと考えても手頃な教材が無いという現場の声を踏まえてのものです。教員研修をおこない、モデル実践校で活用を試みています。

宮嶋さんの認識は、「一般向けに防災講座をやっても出てくるのは退職者や老人ばかり。そのことは否定しないが、一度に多くの人に講習が可能であり、その気のない人にもきちんと防災の必要性を伝え、おまけにお金がかからないのは、学校教育の活用だ」というものでした。

総合的学習時間を有効に活用して防災教育を行っている小中学校もあります。名古屋の大曽根中学校は週2回、合計30時間をかけて、体系的な防災教育を第1学年全員に行っています。防災の専門家や地域の人と関わりながら活動を行い、その活動に触発され、保護者や地域の人が防災意識に目覚めるという副次的効果も生まれているとのことでした。

和歌山県の串本町では、町内の中学校で海抜表示プレートをピクトグラム(ピクトグラムとは絵文字の一種で、トイレマークや非常口マークに代表される誰でもすぐに理解できる記号のこと)で作っています。海抜表示により、何処が比較的安全で何処が危険か、町民も理解が深まる機会になっているとのことです。中心となって活動されている串本町役場の杉本隆晴さんは、総務課で選挙から防災まで幅広く仕事をされています。スキューバの好きな好青年です。私の串本の友人でもあります。

静岡県南伊豆町の南中小学校では、30年前にこの地域を襲い30人の人命を奪った伊豆半島沖地震の際の地震体験文集「大地は裂けて」を復刻し、小学5年生にそれを読ませたことが切っ掛けになり、慰霊碑訪問、被災者体験者の訪問・取材を重ね、当時の体験が現在の防災にどのようにどのように生かされているか検証しているとのことでした。

「今でもやかんやポットに水を入れてから寝るのよ。地震の後一番困ったのは水がないことだったのよ」という被災経験者のお婆さんの言葉が子供達に強い印象を残したようです。

南伊豆町のコミュニティーセンターで地域住民がDIGを体験した際には、子供達が中心になって進めたことから、「頼もしい子供」の姿が地域住民に示すこととなり、結果として、周囲の大人も巻き込む防災活動に繋がっているとのことです。「今の保護者は、政府や自治体や学者の言うことは聞きませんが、子供の言うことはよく聞くのです」とは指導担当の吉田祐子教諭の言でした。

その地域の被災体験という郷土史を振りかえることで、学校教育を通じて現代の地域防災という現代的施策が蘇ったのです。

このような学校における防災教育には、今回表彰を受けた乾パンを食材にして美味しく料理してしまう「防災一座」の活動や、NPOレスキューストックヤードの栗田暢之さんらの間接的支援も大きな励みになっていますが、個々の学校の教諭自身が、総合的学習のまとまった時間を活用して、体系的防災教育を実施してみようという前向きの気持ちから生まれていることだけは事実のようです。

学校教育の見直しの議論の中で、総合的学習の時間を圧縮しようという動きがありますが、今回の発表者の中に、「せっかく芽生えた小中学校の防災教育が、猫の目文部行政の再度の変更で、元の木阿弥になることだけは避けたい」と述べている方もいました。国の施策の変更が、現場では大きな波紋として影響が出ます。一生懸命やっているところのやる気を失わせ、適当にさぼっていたところはほっとしている、というようなことは避けてもらいたいと思います。

審査委員の中に、元文部次官の小野元之さん(現日本学術振興会理事長)もいらっしゃいました。私も後で挨拶させて頂きましたが、小野さんは、今の文部科学省は、「政治家に翻弄されるのではなく事務方としてもっと主体性を持って考えなければダメだ」、と「気骨のあるところ」を示されていました。

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