« 中国とのつき合い方 | Main | PISAショックとフィンランドの経験 »

January 23, 2005

自主防災活動を支援するシステム

自主防災組織の活動は、停滞気味と言われる地域がある一方で、阪神・淡路大震災以降、着実に組織率は向上し、地域によっては非常に活発な活動を行っているところも少なくありません。

大規模災害などが高い確率で想定される近い将来において、地縁組織の伝統に基盤を有する自主防災組織の意義を再確認していくべきであるとの強い指摘がある中、消防庁をはじめとした政府の各組織、地方自治体においても、自主防災組織の意義の再認識が行われつつあります。

一方で、全国的に見ると災害は各地で多発しているものの、個々の地域の立場からすれば、そう頻繁に災害に見舞われているわけではありません。このような中で、自主防災組織が災害活動だけを主たる活動として組織員の緊張感を維持していくことは実際のところ容易ではありません。

継続性のある自主防災活動、多くの参加者を集める自主防災活動を成功させている事例を見ると、教育PTA活動、福祉活動、環境保護活動、青少年健全育成活動、防犯活動、地域のお祭り行事などを自主防災活動と組み合わせ、日常性を大切にしながら、あるいは楽しみながら、自然に地域の人同士のふれあいが行われるようにする中で地域防災力を高めている例が多くあることに気付かされます。

これらの日常的な住民同士のふれあいの積み重ねが、いざ災害時に、「非常モード」に転換し、消火、救助、避難、安否確認、市町村との連絡調整などが円滑に行われることに結びつくものであることは想像に難くありません。普段の地域社会活動での情報共有やつきあいが災害時の地域の防災対応力に役立つのです。

消防庁では、「地域の安全・安心に関する懇話会」(会長;樋口公啓東京海上相談役)を設置し、自主防災活動をどのような形で維持・強化し、どのような方策、どのような連携・協力が必要となるのか、自主防災組織の新たなあり方とは何かを整理し、報告書としてとりまとめています。この報告書は、消防庁のホームページで閲覧できます。

ところで、自主防災組織は、地縁組織を活用した防災組織として、ポテンシャルの高いわが国特有の組織であることは意外に知られていません。日本における自主防災組織は、1971年に米国ロサンゼルスでサンフェルナンド地震の教訓をきっかけに、大都市を中心として設立されたと言われています。当初の設立目的は地震災害対応で、都市部における行政による救援活動に対する協力が主たる活動であり、組織形態は町内会を中心としたものでした。

こうした組織に対し、行政が支援し始めてから30年余りが経過していますが、最近では、組織形態は町内会中心ですが、組織の目的は災害全般への対応に拡大し、エリアは都市部のみならず地方へと広がった上、活動内容も災害予防の観点も取り入れた多面的な活動となっています。

平成7年の阪神大震災以降、自主防災組織数は全国的に増加傾向にあり、組織率は6割を超えています。

自主防災組織は、大災害発生時における地域の消火・救助活動にとどまらず、広報やインターネットを通じて提供される地域のリスク情報や災害発生時の対応に関する行政情報について、各戸にまできめ細かく伝えていく役割も有しています。

最近の災害時に自主防災組織の活動が評価された例としては、平成15年7月の九州豪雨における水俣市の土砂災害時において、住民の早期避難に役立ったケースがあります。

こうした自主防災組織の活動をさらに発展させるに当たっては、わが国に特有の地縁組織を活用した防災の仕組みのメリットを再認識し、これを十二分に生かしていくことが求められていると思います。 

外国においても、日本の仕組みが模範となり、地域の防災組織の育成が行われている例があります。例えば、 米国のCERT(Community Emergency Response Teams)は、静岡県等の自主防災組織の仕組みを参考に発展させたものです。米国では地縁による組織の設立が困難であるため、防災ボランティアの育成という形で開始され、定着させているのです。

1993年よりFEMA(連邦危機管理庁)がこれを推奨しており、45州、340以上のコミュニティーにおいて訓練が実施される等、行政による関与・支援が積極的に行われています。ちなみに、CERTの教育プログラム(1週間1セッションの所要時間は2.5時間。7週間で修了。内容は災害予防、消火、応急医療①、応急医療②、捜索・救助、災害心理学及び組織の在り方、総括及びシミュレーション)には、2003年度予算が約20億円拠出され、2002年までに20万人が受講しています。

阪神大震災後、東京消防庁がこうした仕組みを参考に、「災害時支援ボランティア」制度を設け、平成10年度以降、登録人員17,000名となっていますが、CERTのプログラムなどは、わが国においても自主防災組織リーダー訓練制度への応用が検討できるものと考えられます。

因みに、ロサンゼルスでは、防災専門家によるネットワーク組織ENLA(Emergency Network of Los Angeles)が、福祉・保健・医療など地域における多様なニーズに対応した活動を行う地域密着型組織(CBO:Community Based Organization)をネットワーク化し、災害発生時の支援はもとより、平時からの研修・訓練、災害対応に対する評価を行うことを通じ、地域の組織だけではまかないきれない専門的・技術的サポートや、社会的弱者をはじめとする多種多様な個別ニーズへの対応を担っています。

こうした取り組みを参考に、自主防災組織の更なる活性化を検討していくlことも可能だと思われます。

現状において、自主防災組織の活動に関しては、多くの課題が指摘されています。しかし、規模災害の発生への関心が高まるつつある中、自主防災活動の必要性は更に増しており、新たな切り口により活性化させる必要があります。

活発な取組みを行っているところは具体的な成果を上げる一方で、地域の取り組みには大きな格差が生じています。例えば、墨田区では木造密集地域であって街路も狭く、地盤も脆弱な地域において、一寺小学校と言問小学校を第一次避難拠点として防災まちづくりを進めるため、「一寺言問を防災のまちにする会」(通称「一言会」)を結成し、路地における隣近所のつきあいを大切にし、地域への愛着を持ちながら安全・安心なまちづくりを行っていますが、これは成功している事例です。一方で、近年建てられたマンション等においては、自治会のような組織が十分に防災活動を行っていない場合も多いと言えます。

これらのケースに関しての対応を考えるに当たって重要なことは、意識の高い自主防災リーダーの存在するところで活動が大きく進展する傾向があることから、意識の高いリーダーの育成が必要であると考えられています。そういう人たちを組織的に糾合するシステムがENLAなどのシステムなのです。

|

« 中国とのつき合い方 | Main | PISAショックとフィンランドの経験 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/58165/2667174

Listed below are links to weblogs that reference 自主防災活動を支援するシステム:

« 中国とのつき合い方 | Main | PISAショックとフィンランドの経験 »