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January 13, 2005

スウェーデンスペシャル

今、日本では、スウェーデンが大変注目されています。米国流市場経済主義と同じ歩みをするのが良いのか、ヨーロッパ特にスウェーデンに代表される市場の行き過ぎを修正して、公の役割をより重視する方向がよいのか、議論があります。

しかし、実際にスウェーデンの政策を、スウェーデンの国の成り立ち、その置かれた実情などを十分に理解して体系的に正しく理解している人は極めて少ないのが実情です。藤井威元スウェーデン大使が、「スウェーデンスペシャル」という労作を出版され、スウェーデン方式の本質を深く紹介されておられます。

その本によると、スウェーデンはもともと大変貧しい農業国家でした。一時はバルト海の覇権を握り、ヨーロッパの大国を目指した時期もありましたが、19世紀前半頃から、列強とは異なる道を歩み、覇権主義を放棄、爾来中立政策を追求、国の目標を国内建設に専念し国民経済を発展させることで政策の質の向上を目指すというところに軸足を置いたのです。

その政策は、長期にわたり国民の支持を集め、今では高福祉国家としての地位を確立しています。一方で国民負担も大きいのは周知の事実です。付加価値税は25%という日本では考えられない高率です。地方消費税を加えて5%の負担が重いといって不満が出る日本とは土台考え方が違うのです。なぜそんなことが可能か、日本人が不思議に思うその答えが書かれています。

  ・子供に対する両親の扶養義務は高校卒業時点で終わり子女教育や老人保護などは 国や自治体による集団的サービスとして提供されるシステムが抵抗なく受け入れられている
  ・ふるさとへの愛着の強いスウェーデン人は、地域の生活環境、自然環境を子供たちによりよい形で引き継いでいきたいと願い、それは国や自治体にしかできない仕事だと抵抗なく受け入れられている

スウェーデンもバブル経済に浮かれ、一時は深刻な経済・金融危機に直面しました。例えばGDPの4.5%にも及ぶ公的資金を投入して先手先手の金融危機対策を実施するなどして、国家的な危機を乗り切った経緯が書かれています。戦争時において敗因の原因とされる、「兵力の逐次投入」、しかできない我が国のお家芸から見ると、実に目のさめるような政策実行力です。

スウェーデンの教育、福祉などはユニバーサルサービスであり、所得水準で区分がありません。国民皆が負担をし、国民皆が所得水準に関係なくサービスを受けられるのです。負担だけが重く、肝心なときには所得が高くいとされサービスを受けられないものは少ないのです。だから皆が負担を甘んじて受ける社会となっているのです。

スウェーデンは、人口900万人弱の国ですが、世界的な企業をたくさん持ち、ノーベル賞授与を通じて世界の知性とネットワークを通じ、国の規模以上の存在感を世界に示しています。大学教育まで、無料で提供し、国民の知的レベルをできるだけ高めようとしています。就職してからの社会人教育も高度で広く普及しています。そうした国づくりの背景には、国民の国家に対する信頼感があるのです。

国家への信頼感をもてない国民は、委ねてはならない分野まで「市場」を信頼し、市場化することになり、その結果、米国流の市場経済主義に席巻されることになっていくのでしょうか。その顛末は、森永卓郎氏描くところの年収300万円時代を生き抜く経済学の予言する社会になるのでしょうか。

国家や自治体、社会を信頼し、その政策を国民が皆で支えていこうと思わせるような政治の仕組みをつくらないと、我が国は本当におかしくなってしまうのではないかと思わせる、お薦めの本です。

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