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December 18, 2004

平成17年度三位一体の全体像

(昨年末の反省を踏まえた骨太方針2004)
平成17年度に向けての三位一体改革の議論は、6月4日の閣議決定「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(いわゆる「骨太方針2004」)に向けての作業から始まりました。

平成16年度の三位一体改革や地方財政対策については、1兆円程度の補助金改革が行われたにも拘わらず税源移譲に結びついた額は4500億円程度に過ぎなかったこと、地方交付税などの地方の一般財源が2.9兆円の大幅カットとなったこと、それが年末の土壇場で急に決定されたこと、議論の過程に地方団体の意向が反映されなかったこと、単年度毎の決定により三位一体改革の全体像がなかなか見えにくいこととなっていたこと、など結果として地方団体の不満が極めて大きなものとなりました。

そのような背景のもとで17年度以降の三位一体改革を骨太方針2004にどのように位置づけるかについては政府部内で大きな議論になりました。

麻生総務大臣は、昨年の反省点を受けて、①補助金改革の先にある税源移譲の規模を先行的に明示し地方団体に展望を示す必要があること、②三位一体を成功裏に達成するために、セイフティーネットたる地方交付税の総額は確保する必要があること、③地方団体の意向が三位一体改革に的確に反映される仕組みを組み入れること、などを主張しました。勿論これに対しては、財務省サイドから非常に厳しい反応がありました。①補助金整理の目処が立たないのに税源移譲の規模を明示することは困難であること、②地方交付税は抑制していくことが政府の方針であること、③国の政策決定に地方団体の意見を公式手続き上取り入れることは問題が多いこと、といった反応です。
紆余曲折の議論を経た結果、6月4日の「骨太方針2004」がまとまり、閣議決定されました。なお、閣議決定に先立ち、6月3日には、自民党政審、総務会の了解を得ています。

さて、その骨太方針2004のエッセンスは以下の通りです。
・ 平成18年度までの三位一体改革の全体像を平成16年秋までに明らかにし、年内に決定すること
・ その際、地方の意見に十分耳を傾けること
・ 全体像には、平成17年度及び平成18年度に行う3兆円程度の国庫補助負担金改革の工程表、税源移譲の内容及び交付税改革の方向を一体的に盛り込むこと
・ 税源移譲は概ね3兆円規模を目指すこと
・ その前提として、地方公共団体に対して、国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう要請し、これを踏まえ検討すること
・ 税源移譲については、平成18年度までに、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施すること
・ 地方交付税については、地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保すること。
・ 財政力の弱い団体においては、税源移譲額が国庫補助負担金の廃止、縮減に伴い財源措置すべき額に満たない場合があることから、実態を踏まえつつ、地方交付税の算定等を通じて適切に対応すること

(地方に求めた改革案のとりまとめ)
補助金・負担金については、霞ヶ関の各省庁にとっては、政策実現手段として有用なものとして認識されています。また、国会議員にとっても有権者、地元と議員を結びつけるパイプの一つとしてこれまで慣れ親しんできたツールとなっています。補助金を整理してこれを地方税源に振り替える三位一体改革が、実は国政の政治活動のスタイルを大きくかえる「静かな革命」と言われる所以のものです。それだけに補助金に対する執着は霞ヶ関・与党の国会議員共に強く、自己改革が難しい分野でもあります。

このことは、これまで、補助金改革を関係各省でまとめようと思ってもなかなか進まず、過去の補助金改革が、結局は極めて小規模なもので終わったり、補助率カットという安易な地方への負担転嫁に終わってきた歴史が物語っています。

骨太方針2004は、こうした問題意識を背景に、3兆円規模という巨額の補助金改革を行うためには、実際に補助金を受けて仕事をしている地方公共団体に意見を聞き、これを廃止して税源移譲に結びつけることとすべき補助金負担金のリストを提示してもらおうという、逆転の発想に立って補助金改革の突破口としようと考えたものです。因みに、この考え方は、地方税財政の決定過程に地方団体の意見を反映させるべきであるとの、昨今の地方団体の要請が結果として実現したものとも言えます。
 
(地方団体にとっての暑い夏)
骨太方針2004年に基づき、6月9日に、政府は、地方6団体に対して、8月20日までに3兆円規模の国庫補助負担金改革の具体案の取りまとめを行うように要請しました。2ヶ月強しか時間の余裕が無い中での巨額の補助金廃止リストの作成です。地方6団体にとっては、判断と作業の両面から試練の夏となりました。

地方公共団体にとっては、現に補助金を受けて仕事をしているそのスポンサーに対して、ものを申すのですから、ある意味で「勇気のいること」でした。案の定、各地の地方公共団体に対しては、補助金存続に向けての関係省庁の働きかけが随分とありました。ある省の指定職の方が、全国の知事や市長を行脚して回ったということがマスコミでも頻繁に取り上げられていました。

提案を求められた地方公共団体も、国の要請に応えるべきか否か、賛否両論が議論されました。都市部と農村地域で補助金に対する依存度の違いもあります。補助金をもらって仕事をしている部署の職員からは、補助金が無くなって将来にわたり自分たちが行っている仕事が果たして維持されるのか、不安感を持った皆さんも多かったはずです。
そして、この間、特に大きな議論となったのは、義務教育費国庫負担金です。何故義務教育費国庫負担金が議論になったかというと、政府から地方団体向けの補助金に占める当該負担金の割合が大きいこと、更に、税源移譲の候補として、地方公共団体からみてより受け入れやすいという性格があると認識されたからです。ではここで国庫補助負担金の全体像を眺めてみましょう。

(国庫補助金負担金の全体像)
平成16年度ベースで地方団体向けの国庫補助金等は20.4兆円程度あります。このうち国庫負担金が16.8兆円、国庫補助金が3.3兆円、委託金が0.3兆円です。このように見ると、殆どが国と地方の法令による負担区分に基づく負担金であることが分かります。

奨励的国庫補助金は3.3兆円とその額は全体の中では多くはありません。その3.3兆円の奨励補助金の内訳は、国家補償的な性格を有するものやごく限定された地域の特殊事情に関するものなどを除くと、経常経費系統で0.8兆円、投資的経費系統で1.8兆円といった内容です(この1.8兆円のうち道路特定財源を原資にした地方道路整備臨時交付金が0.7兆円を占め、他はまちづくり交付金、水道施設整備費補助、廃棄物処理施設整備費補助、社会福祉施設等施設整備費補助、公立学校等施設整備費補助などが大所です)。

建設国債を財源としていない経常経費系統の補助金0.8兆円の内訳は、在宅福祉事業費補助金、児童保護費等補助金、都道府県警察費補助金、協同農業普及事業交付金、小規模企業等活性化補助金などが大所であり、額としては一兆円に遠く届かない額となっています。

国庫負担金16.8兆円は、大きく経常経費系統の13.6兆円と投資的経費系統の3.2兆円に分かれますが、経常経費系統で大きいのは社会保障関係経費の11.1兆円であり、次いで文教・科学振興系統つまり義務教育費国庫負担金を中心とした2.6兆円があります。社会保障関係経費は、老人医療、市町村国民健康保険、生活保護、介護保険、児童手当、児童保護関係経費などが大所です。社会保障全般に関しては、現在その制度間調整の議論が始まっており、また医療費や生活保護費負担などは地方団体の自由度の全く効かない分野でもあり、これらの負担を一般財源化することは基本的に困難度が高いものと思われました。

投資的経費の負担金3.2兆円は、ほぼその太宗が公共事業関係です。下水道事業費補助、道路関係負担金、公営住宅建設費補助などが大所であり、これらは建設国債を財源にしているほか道路財源を原資にしています。

三位一体の議論の中では、政府の方針(基本方針2004)の中で、税源移譲に結びつく補助金改革が求められていました。この「税源移譲に結びつく」というところがミソであり、補助金負担金を廃止してもなお地方団体が事業を実施していくものかどうか、税源移譲が国税の移譲であることから、その国税を直接原資として事業を行っている行政分野に係る補助金負担金である方が税源移譲の議論に馴染みやすいという現実的側面があると言えました(尤も、建設国債を財源にするから税源移譲は出来ないという議論は必ずしも理論的ではありません。建設国債を発行したとしてもその償還は国税を以て当てることになるのであり、補助金負担金を受けて行う事業の地方移管により、地方団体の負担は確実に増えるのであり、その分の恒久財源の付与はある意味では当然の話なのです。)。

このように見てくると、三位一体の3兆円規模の税源移譲を目指す場合の前提となる国庫補助負担金の整理候補として、義務教育費国庫負担に注目が集まるのも現実問題として否定できない側面がありました。

(義務教育費国庫負担金問題)
義務教育制度が国の将来にとって極めて重要なものであることは言うまでもありません。現在、義務教育教職員の給与の半額が国庫負担で賄われていますが、義務教育教職員の給与を賄う財源が、直接の国費である必要があるか否かというのが、この問題の具体的な論点でした。文部科学省は、一般財源化により、地方団体が的確に教育支出を行うのか大きな懸念を表明し、そのことが一般財源化に懸念を表明する教育関係者の琴線に触れる最大の反対理由になりました。

この点に関する地方6団体の議論を集約すれば、この財源論は、義務教育制度にとって重要な論点ではあるが、必然的な選択肢ではない、ということでした。地方6団体の義務教育費国庫負担金廃止論の論拠は概ね以下の通りでした。
・ 明治維新や戦後復興期においては、国が、教育水準の向上に主導的役割を果たしたが、日本が世界の先進国の仲間入りを果たし、これまで築きあげてきた国民の努力を背景に、教育環境の整備も一定水準に達した現在、今日の時代にふさわしい新しい教育の在り方が求められている。
・ 一定の教育水準確保を前提に、地域の特色を生かした多様な教育の取組みが求められている。
・ こうした時代認識を踏まえ、平成12年施行の分権一括法では、教職員の任免や学級編制基準の設定等の事務を国が地方にその実施を委託する性格の機関委任事務から地方自治体自身が主体的に行う自治事務に転換し、教育の実施が地方の責務であることが、より徹底された。
・ 平成12年の改革理念を具体的政策に移すことが求められており、この際、「国は、地方『自治事務』である教育行政について、制度の根幹を定める一方で、具体の運用は地方に任せる」との考えに立って、地方団体の自由度を最大限拡大する政策方向こそ重要だと考える。

8月18日と19日に開催された全国知事会総会では、長時間に亘る議論の末、義務教育費国庫負担の一般財源化に向けた結論を採択され、地方6団体としての国庫補助負担金等に関する改革案がとりまとめられました。

(まとまった地方6団体の提案)
地方6団体は、義務教育費国庫負担金に加え、経常的な国庫補助金、経常的な国庫負担金、施設整備に関する国庫補助負担金、公共事業等投資的な国庫補助負担金を併せて3.2兆円の国庫補助金を税源移譲対象補助金としてリストアップしました。政府の要請の期限どおりに提案をまとめ、8月24日に小泉総理に提出しました。

地方6団体の提案は、政府の要請に基づく17-8年度の改革に加え、19年度以降の第2期改革も視野に入れた提案になっています。また、改革案が適切に実施されるための前提条件も示していました。地方の意見が確実に担保されるための国と地方の協議機関の設置、税源移譲との一体的実施、確実な税源移譲、地方交付税による確実な財政措置、負担転嫁の排除などの考え方が示されました。これは、地方の改革案が、よいとこ取りされ 単なる補助金のカットにより地方財政へのしわ寄せとなることを懸念したことによるものです。

改革案は、経常経費系統から投資的系統に及ぶ内容となっており、地方6団体としては、各行政分野ごとのバランスに配慮したものになっています。義務教育費国庫負担に関しては、17-8年度においては中学校分の一般財源化を提案し、小学校分については第2期改革に送っています。建設国債を財源としている補助負担金に関しては、施設整備ものに係るものと施設整備以外の公共事業等投資的なものも改革案に含め、建設国債を財源にしている補助金負担金についても税源移譲を求めていく姿勢を明らかにしました。補助金の目数で数えると148項目に及ぶ改革案となりました。

この提案を、予算ベースで所管省庁別に再整理してみると、文部科学省、厚生労働省、国土交通省、農林水産省、環境省、内閣府、経済産業省、総務省という順番で額が多いことが分かります。

とにかく、これだけ巨額な補助金負担金改革案を極めて短期間にまとめ上げるのには大変な苦労がありました。個別団体の利害を乗り越えて、大同団結した6団体の姿勢は評価されて然るべきです。

(地方提案を受け取った政府の対応)
地方公共団体間の利害が一致せず、ひょっとしたらまとまらないと思われていた地方提案がまとまり、政府に提出されてからは政府側がてんてこ舞いとなりました。小泉総理は閣議決定まで行って地方に提案を求めたわけですから、当然その提案は真摯に受け止め実現に向けて努力するという立場に立ちました。総理は、9月3日に、関係各大臣に対して、「地方からの改革案を真摯に受け止め、改革案の実現に向けて率先して、責任を持って、全力で取り組み、全力で取り組み、平成17年度予算に最大限、活かしてもらいたい」と指示しました。

この指示を受け、官房長官からは、国と地方の協議の場を設けて議論を行うこと、テーマ毎の会合を開催すること、地方の改革案に意見がある場合には提案されている廃止額に見合う国庫補助負担金改革の代替案を提出すること、その検討結果は10月28日までに報告すること、などの一連の指示が出されました。

問題は、これを受けた各省庁の対応です。先に述べたように、補助金負担金に対する各省庁のこだわりは非常に強いものがあります。与党の関係議員の意向と相俟って政府内の調整は極めて困難を伴いました。党との調整作業も大きな課題となりました。

これらの意見調整のために、先に述べた国と地方の協議の場をはじめとして、政府内調整の核としての4大臣会合、政府・与党協議会、4大臣・与党政調会合などが断続的に開かれました。

このような中で、10月28日に提出された各府省から返事は、地方の提案がほとんど顧みられない内容となりました。3.2兆円の提案に対して、各府省が廃止縮減に応じた補助金負担金額は僅か1164億円でした。しかも、税源移譲の対象として各省がカウントしたものは、更に絞り込まれ、810億円に縮小したものでした。桁違いに少ない額に止まっていました。更に、厚生労働省からは、地方が提案の中でこれだけは受け入れられないと強く反対していた生活保護、国民健康保険、児童扶養手当の負担率カットの提案が行われました。これに対しては、地方公共団体は強く反発しました。

この点を巡っては、国と地方の協議の場で、各府省と地方公共団体が直接議論を行いました。しかしながら、両者の主張は噛みあわないまま推移しましたマスコミ紙上では毎日のように、「総理の指示に従わない霞ヶ関」などと揶揄する記事が紙面を飾りました。

(自民党での調整)
各府省の返事が政府に提出されるタイミングに相前後し、自民党の調整作業も始まりました。与謝野政調会長の元、柳沢政調会長代理を座長とし、自民党各部会の意見聴取、各府省からのヒアリングが行われるに至りました。小泉総理が、与党との調整も精力的に行って欲しいとの要請を行ったことが契機になりました。政府の作業に並行し、与党が補助金改革のとりまとめに乗り出すということになりました。

各部会のヒアリングを経て、11月16日には、政務調査会の名で、「三位一体改革」具体化の作業指針を示し、自民党としてのとりまとめの段階に入りました。作業指針は、骨太方針2004、その他の規定方針を踏まえ、税源移譲対象補助負担金の条件付与の考え方、交付税改革の考え方に関し、とりまとめの方針を明示するもので、自民党としての補助金整理に当たっての基本的視点を示すものでした。

(まとまった政府・与党案)
紆余曲折を経た政府・与党・地方の議論の結果、政府・与党の合意がまとまり、11月26日に「三位一体の改革について」として、平成18年度までの三位一体の改革の全体像についてとりまとめを行いました。その概要は、次の通りです。
・ 国庫補助負担金改革については、平成17年度及び平成18年度予算において、3兆円程度の廃止・縮減等の改革を行う。
・ 税源移譲は、平成16年度に所得譲与税及び税源移譲予定特例交付金として措置した額6,560億円を含め、概ね3兆円規模を目指す。
・ 概ね3兆円規模の税源移譲のうち、その8割方については、義務教育費国庫負担金(暫定)8,500億円程度(平成17年度分は4,250億円)、国民健康保険7,000億円程度、その他補助負担金2,100億円程度の17,600億円程度及び平成16年度分の6.560億円を加えて24,160億円程度とする。
・ 平成17年中に、生活保護・児童扶養手当に関する負担金の改革、公立文教施設等建設国債対象経費である施設費の取扱い、その他について検討を行い結論を得る。
・ 税源移譲は、所得税から個人住民税への移譲によって行うものとし、個人住民税所得割の税率をフラット化することを基本として実施する。あわせて、国・地方を通じた個人所得課税の抜本的見直しを行う。また、地域間の財政力格差の拡大について確実な対応を図る。
・ 地方交付税については、平成17年度及び平成18年度は、地域において必要な行政課題に対しては適切に財源措置を行うなど、「基本方針2004」を遵守することとし、地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保する。あわせて、2010年代初頭における基礎的財政収支の黒字化を目指して、国・地方の双方が納得できるかたちで歳出削減に引き続き努め、平成17年度以降も地方財政計画の合理化、透明化を進める。税源移譲に伴う財政力格差が拡大しないようにしつつ、円滑な財政運営、制度の移行を確保するため、税源移譲に伴う増収分を、当面基準財政収入額に100%算入(現行75%)する。決算を早期に国民に分かりやすく開示する。平成17年度以降、地方財政計画の計画と決算の乖離を是正し、適正計上を行う。その上で、中期地方財政ビジョンを策定する。不交付団体(人口)の割合の拡大に向けた改革を検討する。引き続き交付税の算定方法の簡素化、透明化に取り組む。また、算定プロセスに地方関係団体の参画を図る。
・ 義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する。その方針の下、費用負担についての地方案を活かす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討する。こうした問題については、平成17年秋までに中央教育審議会において結論を得る。中央教育審議会の結論が出るまでの平成17年度予算については、暫定措置を講ずる。
・ 国民健康保険については、地方への権限移譲を前提に、都道府県負担を導入する。
・ 公共投資関係の補助金の交付金化については、省庁の枠を越えて一本化するなど、地方の自主性・裁量性を格段に向上させる。
・ 国による基準・モニター等チェックの仕組みを検討し、補助負担金の廃止・縮減によって移譲された事務事業については、地方団体の裁量を活かしながら、確実に執行されることを担保する仕組みを検討する。

 (政府・与党案の受け止められ方)
政府・与党の改革案に関しては、様々な評価があります。手順が良くない、との話もあります。ある自民党のOB議員は、地方に意見を聞くなど、明治以来ないことだ、政府としての責任を放棄したものに等しい、とおっしゃられておられます。一方で、結局は、地方案を真摯に受け止めるといいながら、霞ヶ関や与党の抵抗を排除できずに、中途半端で、懸案先送りの結論になったとの非難もあります。

しかし、よく考えてみましょう。今回地方に案を求め、その基本的考え方を踏まえ、国と地方が文字通り同じテーブルで口角泡を飛ばす議論を行い、3兆円規模の税源移譲を目指したことは、とにもかくにも地方分権に向けた大きな一歩と考えていいと思います。

提案を行った地方公共団体から見ると、多くの点で内容的には不満のある点もあるかと思われます。しかし、地方公共団体が絶対に受け入れることが出来ないと主張していた生活保護費国庫負担率の引き下げは当面回避されています。地方交付税についても、一部にあった大幅削減論を跳ね返すことが出来ました。更に、「国と地方の協議の場」も今回で終わることなく今後とも継続していくことが決定されています。

国も地方もお互いに堂々と意見を述べあい、今後とも地方分権の方向でより良い解決策を目指していけるのです。与えられる地方分権でなく、議論して獲得していく地方分権の土台が出来上がったのです。
 
先ほど、ある自民党のOB議員が、「地方に意見を聞くなど明治以来ないこと」とおっしゃった旨紹介しましたが、実際そうだと思います。しかし、歴史上の事実としてはそういう事例はあったのです。

 (歴史の潮目)
政府の中での調整が出来ないので、地方の意見を聞く、というのは、大河ドラマで見たような内容です。実は、今から150年ほど前に同じことがあったのです。幕末に、当時の政策課題に関して、幕府が諸藩の意見を聞いたという史実があります。

1853年嘉永6年にペリーが浦賀に来航しました。時の老中、阿部正弘(当時34歳)は、ペリーの来日とアメリカの大統領国書について、朝廷に報告し、先例を破って諸大名や幕臣に国書への返答について意見を提出させました。幕府は朝廷や諸大名と協調しながらこの難局に当たろうとしました。結果的には、この措置は朝廷の権威を高め、諸大名には幕政への発言の機会を与えるということになった、というのが歴史の評価です。

そういう、歴史的に見ても画期的なプロセスを経ているのが今回の改革論議なのです。ということは、今回の分権論議は、実は、幕末から明治へと至る時代の変遷に匹敵する歴史の流れの中にある議論であると見るべきなのかも知れません。

総務大臣として、地方公共団体の立場に立って今回の三位一体議論のリード役を務めた麻生太郎大臣は、今回、結論を得るまで、国と地方の協議の場、4大臣会合、政府・与党の会合など、この約一ヶ月間に、毎朝毎晩、閣僚や与党政策責任者の皆様と、合計31回、延べ約29時間の三位一体改革の協議に参加されてこられました。そうした経験から、「細田官房長官室で深夜に及ぶ議論を重ねながら、私は、政治の大きな潮目が来ていることを実感しました。日本には、今確実に地域主権の波が押し寄せており、このうねりは、どんな抵抗を受けようとも、決して後戻りすることはないのです」と心情を吐露されておられます。
http://www.soumu.go.jp/daijin_column/index.html

全国知事会長の梶原岐阜県知事が、政府・与党案がまとまった11月26日の「国と地方の協議の場」においての発言として、今回の三位一体議論に参加して、内容的には評価を先送りせざるを得ないとしながらも、政府が地方案を真摯に受け止めて対応したこと、議論の過程で非常に勉強になったこと、これからは国と地方で協調してやっていきたいこと、を発言されたことは、今回のプロセスの持つ意味を物語るものだと思えます。細田官房長官も指摘された、「政府と地方の協議の元年」という意味でも意義のある年となったのです。来年に向けての議論にも期待したいと思います。


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