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December 26, 2004

3惚れ主義と三島通庸

暮れも押し詰まった平成16年12月26日、岐阜に部下の結婚式で行ってきました。挨拶を頼まれて、以下のようなものを用意しました。実際にはこのとおりには喋りませんでしたが。

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ご紹介に預かりました、O君の職場の上司で、****と申します。O君、Hさん、御両家の皆様、本日は本当におめでとうございます。

私ども、実は結婚式に呼ばれると、大変嬉しい思いがします。仕事上では、なかなか晴れがましい場面がありません。O君もそうですが、公務員の仕事は結構「地道」です。私などは、まだいろんなところに飛び回ることもあるのですが、駆け出しのO君達は、ひたすら上司の動きを支えるために、地道に各省庁との折衝やら数字の詰めやらやっていてくれます。ですから、O君が晴れがましい舞台に立ってくれると嬉しく思います。

いったい、新郎の仕事は何なのか、とお思いの方も多いでしょうが、O君の今の仕事は、課の中で、国土交通省関係の制度改正の担当です。例えば、国土交通省が道路に関する制度を改正しようとする。道路は建設主体はその殆どが自治体です。自治体のする仕事に国は補助金を出したり、道路の作り方などを指示します。その場合に、国の指示が地方自治の精神からして適切なものか、その負担が加重なものにならないかどうか、チェックをします。

最近では、三位一体という議論があり、補助金を減らして出来るだけ地方に財源を振り替え地方が自主的に仕事を
出来るような仕組みにしようというような仕事もでてきています。これには各省の抵抗もあり、各省庁と地方の間に入って調整に苦労するというのが、彼の仕事なのです。

と言っても、この世界をご存じの方以外には具体的には、ピントこないかも知れません。無理もありません。形には現れにくい仕事なのです。しかし忙しい。この数ヶ月、多分彼は月に100時間では利かない程の残業をし、その中で忙しいさなかの披露宴を迎えているのだと思います。

とにかく最近は仕事量が多くなっています。仕事を丁寧にこなすということが出来ず、多量の仕事をテキパキと捌くと
いうことが求められるに至っています。彼も4月に部署が変わり、ギアの切り替えで大分苦労しているのではないかと思っています。

それでも、O君の属する採用区分のものは地方勤務の機会があります。O君もあともうちょっと頑張っていただくと地方勤務が待っています。若くして自治体の管理職に抜擢されることになります。

最近は昔とちがって、ちやほやされることはほとんどなくなりましたが、しかし、霞ヶ関にいたのでは分からない、現場の実態が分かるようになります。これこそが貴重なのです。

私も旧自治官僚の端くれとして地方勤務を行ってきましたが、「仕事に惚れろ、地方に惚れろ、女房に惚れろ」の三惚れ主義でやれと結婚式で上司に言われた思い出があります。仕事に惚れろ、地方に惚れろ、というのは分かりますが、女房に惚れろ、というのは何でしょうか。多分、女房に惚れてさえいれば、赴任した地域で女性問題を起こさずにすむので、結果として地方での勤務がうまく行くという意味で、これらをしっかりしていれば地方勤務がきちんとこなせるという教訓だったと思います。

この話を、東大のある日本史の先生にしたところ、異様な興味を示されました。先生は三島通庸という明治の県令、今でいう知事ですが、その研究をしておられ、彼は長年連れ添った奥さんとの間に12人の子供があり、山形県令に就任した時には、県の役人に「登楼しない」という誓約書を出させているのだそうです。

三島は、大変厳しい行政をしたことで有名です。福島県令時代には、河野広中などの自由民権運動を弾圧した福島事件に関わりました。しかし、一方で、地域開発には尽力し、山形県での評判は非常によいようです。ひょっとしたら、既に三島の時代からそのような口伝があったのではないかと、その先生は推測されておられました。

O君は、きちんと奥さんを娶られ、地方勤務の体制が整ったのだと思います。昔の伝統などは、今では余り通用しないかも知れません。しかし、よい伝統は伝えていくべきです。

私なりに、はなむけに何か一言気の利いた言葉を探してみました。私の反省を込めて思うことは、奥さんに「有り難う」と言うことだと思います。有り難うと言われると、それは相手に悪い印象は与えません、何も言わないでいると、結構危うい。

私も最近それに気がつき、出来るだけその様にしています。お互いの気持ちが優しくなります。そのためかどうか分かりませんが、雨の日など、女房が車で役所まで送ってくれることもあるようになりました。御利益はあります。もっともそのために新車を買わされましたが。

仕事は自分一人でするものではなく、皆でするものです。皆が気持ちよく仕事が出来るようにすること、その精神は家庭生活でも同じことです。自分自身が感謝の気持ちを忘れずに、それで家族がしっかりすれば、仕事もしっかりする、仕事がしっかりすれば、引いては地域も国家もしっかりする。今の日本が乱れているのは、家庭がバラバラだ
からなのではないでしょうか。

孔子という中国の紀元前の思想家がその著書「論語」のなかで、道徳政治の理想を掲げました。「修身、斉家、治国、平天下」というものです。身を修め、家をととのえ、国を治め、天下を平らかにする、そういう意味です。

昔は、こういうことを普段の子供の学習の中で教え込んだのですが、今はないですね。2000年以上も前に言われたことが今でも伝えられているということは、それが人間社会の真理を突いているからだと思います。

そういう、先人の言葉や「有り難う」という感謝の言葉を忘れずに、をはなむけに贈り、私のお祝いの言葉とさせていただきます。

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