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December 26, 2004

人口減少社会の処し方

松谷 明彦氏と藤正 巌氏の共著「人口減少社会の設計」という文庫本を読みました。

日本の社会の中長期的将来を、人口構造の変化・減少という観点から捉えるとどういう姿になるのか、極めて明瞭に説得力をもって解析している本です。

マクロ経済学、財政学を専門とする元大蔵省の松谷氏と、医学、物理学を専門とする東大名誉教授の藤正氏の共著ですが、文と理の両者の筆が違和感無く融合し、リアルではあるが深刻ではなく将来の日本の姿を描き出しています。

戦後の日本は、大量生産方式で労働者に単純労働を強いたが、勤労意欲の維持を確保するため終身雇用と年功賃金制を導入したと解説されています。しかしこれも、労働者の新規雇用が年々増加する仕組み、すなわち労働者の年齢別構成がピラミッド構造が必要であり、全ての企業でそれを可能ならしめるためには、国全体の年齢別人口構成自体がピラミッド構造であることが必要であり、日本的雇用慣行もこれまでの人口増加社会でなければ生まれなかった制度であると説明しています。

ところが、人口減少社会においては、必然的にその雇用慣行を崩壊させることになります。企業にとっても、昔は多くの若い労働者に低い給料で我慢するように説いてきましたが、今では当時の若い労働者が高い給料をもらう年齢となり、中高年齢層のリストラに向かわせており、年功序列が今は裏目に出ているのも、マクロ的には企業の人口予測の見誤りと断じられています。

日本経済にとって人口減少社会はどうなのか、企業活動を行っていく上での視座も描かれています。今後の企業の設備投資は抑制基調にならざるを得ないが、その場合、設備投資向けの企業の内部留保が大きすぎる、むしろ労働分配率を高め、労働者の可処分所得を増し、消費大国を目指すべきだと主張しています。諸外国と比較し、日本の場合は、労働分配率が低すぎることを指摘しておりそれなりに説得力があります。消費の刺激により企業の利益も生まれるのに、企業内に内部留保を抱え込み、景気停滞を招いていると指摘は、文字通りの合成の誤謬というものだと納得させられます。

人口減少社会では政党は多党化するとの指摘もあります。政治的意思決定は、人口の集中する周辺の意見に合わせて行われざるを得ないことから、高齢化社会で人口減少となると、多くの人々の関心が、企業がどうなるかよりも年金や医療などの公的サービスへの関心が高まり、経済政策と社会施策の矛盾の無い両立が難しくなり、勢い、多党化すると予測されているのです。

受験戦争も緩和され、人を押しのけて狭き門より入るのではなく、如何に自分自身のレベルを高めるのかという方向に質的に変化する社会に移っていくことが考えられるともしています。これは、子育てに関する親の姿勢に関係する興味深い論点でもあります。

経済効率性を求めて地理的にも集中した人口は、分散に向かう、とし、人々の帰属意識が国からコミュニティーへと移っていくものと予想しています。今の地方分権の動きは時代の必然性を物語るものなのでしょう。

この本を読んでいると、何とはなしに、肩肘張らないで、21世紀前半を活きていく上での羅針盤を示されたような気分にさせられます。時々近隣の目黒区立の図書館に行きますが、偶然めぐり合った良書でした。

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我が家は、JSTVというのが映る。 海外にいながら日本語放送が24Hみれるのだ。 (主にNHKの番組、民放のドラマも数ヶ月おくれでやったりする。) 昨日から三夜続きで、「シリーズ・人口減少社会」を見始めた。 人口減少←少子化の図式で始まったのが気に入らなかった。 少子化自体は問題ではあるが、少子化が進もうが、進むまいが、 人口減少は避けられない。 来るべき人口減少社会と人口半減後の日本で、何が役立つのか、 何がビジネスの種になるのか、今からしっかり考えよう... [Read More]

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