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December 23, 2004

江戸期以降の建物防火対策の歴史

以前、南青山の国連大学で、長野県諏訪市出身の藤森照信東大教授から江戸期以降の建物防火対策の歴史に関し、興味深いお話しを伺いました。以下は、そのエッセンスです。

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・ 現在、地震、洪水、火事のなかで火事はほぼ克服された。大火は克服。大火の克服は明治以来の大事業。
・ 火事は政府の政策とも関係する。市民の協力も大いに関係する。これが合わさったときに克服される。
・ 昔は地震と同じように仕方がないと考えられていた。
・ 洪水は各藩が力を入れた。水田がつぶれることを防ぐという観点。輪中は中国の万里の長城に匹敵する。
・ 江戸幕府にとって火事は微妙な存在。本気で克服しようとしているかは疑われる。湯浅商店が克明な記憶。24年に一回の全焼。富を貯めさせて大火で金を使わせる。封建時代のシステム?。大火のあと数日後には木場から材木が運ばれ建物が建ち、営業も再開。焼け跡のクギ拾いが一つの産業に。
・ 年末になると半鐘が鳴るのを人々は心待ちにしていた。 富が蓄積し商人の力が強くなりすぎるのを「調整」することで、封建社会を維持しようとしたのではないか。
・ 江戸時代に資本主義を唱えた本田利名?という思想家が幕府から抑圧されたが、彼は火事がある限り資本主義は育たない、と主張。
・ 明治時代資本主義が始まったが火事が大きな問題に。明治時代に入って東京中枢部での大火が相次いだ。1882年には中央区だけで2万棟消失。政府は困り、本気で火事を克服する努力。
・ 東京防火令。1882年施行。以降大火事は止まる。
・ 京都は明治以降京都では大火が起きず。京都府庁は特段の政策は無い。何もしないのに大火が克服。京都の人は子供の頃から火事に対する意識が教え込まれる。強いコミュニティーが1000年続く。町組単位での防火意識。本気で火事を起こさないというコミュニティーが出来れば火事は起きないということ。
・ 東京にはそういうコミュニティーがない中でどのように火事を克服したか。松田東京府知事が二つの政策を出した。実態を知るべし、ということで、一軒一軒の家すべての構造を調べ上げた。4万棟の建物を調べた。神社まで調べた。分布も把握。
・ その結果分かったことは、東京の建物の屋根は8割方茅葺き、板葺き、布葺きなど非瓦葺きであることが分かった。大通りは瓦葺きであるがそれ以外は防火性能が低いことが分かった。
・ 明治政府は煉瓦の建物を推進しようとしたが、途中であきらめた。最後に東京防火令発布。大通りに沿ってはすべてを蔵作りに。土壁なので大火が食い止められる。通りの中側の建物は屋根を瓦葺きに。路線防火、屋上制限の思想を導入。
・ その結果、路線防火が1400棟。31318棟が屋上制限。これを一年でやるべき、と。3割の実施率。5年間期限を延長。延期の条件として、建築費の積み立てをさせ、併せて高利で預金をさせた。皆喜んで積み立てた。結果的に40000棟が建て替えた。東京の大通りはほとんどが蔵作りに変わった。
・ これで大火が収まったが、1923年の関東大震災で、揺れで建物の土壁が落ちて、木材が露出し、フラッシュオーバーの輻射熱で建物が燃えた。
・ 東大の内田ショウゾウが研究。土が落ちなければいいのだが、ちょっとした材料があれば土は落ちないとし、準防火の思想を導入。モルタル、銅板でもいい、という基準を法律に導入。
・ 火事は起きてもいいが人が死なないように、との発想。モルタルがちょっとあるだけで大火は防げる。
・ ところが次に来たのが空襲。米国はアリゾナ砂漠の中に日本の町を再現。日本をよく知るレイモンド(ユダヤ人)が指導し、空襲の実験。これにより焼夷弾を開発。レイモンド氏は戦後日本で批判された。大空襲には準防火も適わなかった。
・ 阪神・淡路大震災の大火と準防火の関係。準防火だと火のスピードが遅い。フラッシュオーバー的な人命損傷はなかったが、建物が潰れ人が死ぬことは防げず。
・ 以上、政府は地震を除けば大火は克服されたと考える歴史。
・ しかし、東京のやり方と京都のやり方の対極的な方法がある。
・ 大正7年まで東京以外は都市計画法が適用されなかったように、地方都市は独自のやり方で防火対策を講じざるを得なかった。


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