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December 14, 2004

関東大震災時のボランティア活動

東京大学文学部助教授で日本史(特に明治期の機械工業史)を専攻している鈴木淳氏が、「関東大震災」という新刊本を出版されました。氏は、個人的興味から、「町火消たちの近代」(吉川弘文館)という本を出版し、その中で江戸期からの消防の歴史を書かれていますが、併せて、歴史的文書を調査する中で、災害時のボランティア活動にも造詣が深い方です。

この本の中で、鈴木氏は、81年前の、首都を襲った大災害の拡大防止・被災者救護に当たった人々の活動の検証を行っています。その活動はどのような限界があり、次の時代にどのように繋がったのか・・・関東大震災をこれまでにない局面に焦点を当て再評価した本です。

鈴木先生は、歴史学者でありながら、現在、中央防災会議の専門委員や消防庁の勉強会でご活躍されております。今や災害は、消防、土木、建築、地震学だけではなく、歴史学などの人文科学まで動員して総合的に検証する分野となっているのです。

さて、平成7年の阪神・淡路大震災の際に、ボランティアが活動し、ボランティア元年と言われ始めたことは我々の記憶に新しいところです。政府でもその後、1月17日の前後をボランティア週間として、ボランティア活動を慫慂する行事を行うに至っています。法律も改正し、ボランティアの活動環境を整備することを国・地方公共団体に責務として課すに至っています。
 
実は私は数年前に鈴木氏の話を伺う機会がありました。先生の話によると、大正12年の関東大震災でも、ボランティア活動が熱心に行われたとのことです。23万6412戸を焼き尽くし、10万人規模の死者を生じる、明暦の大火以来の大災害をもたらしたこの災害は、136件という多数の火災発生と震災による水道の断水により、防御は困難を極め、多数の消防士・消防組員の殉職者を出す結果ともなりました。

この大震災時に、全国から、青年団という形で有志が東京に駆けつけ、被災者救護などに尽力したのだそうです。東京帝国大学の学生は、上野の山に避難した多数の被災者支援のために、学生服を着て仮設便所の穴掘りなどに携わり、それを見た周囲の人も、「帝大生が穴掘りをしているのであるから我々も参加せざるべからず」と、大いにボランティア活動が盛り上がったとのことでした。

この時期には、東京帝国大学や各省庁を始め各事業所ごとに消防隊があり、周辺の火災にも出動している事情があったようです。それでも鈴木氏によると、この時期は、東京においては国家公務員としての常備消防を強化していく中で、従来の町火消しの流れを組む消防組の機材整備、人員確保に力が入らず、「水道が断水する中で、水道消火栓直結用のホースと筒先しか持たなかった消防組にとって致命的な事態」となったとのことです。そういう中で、通常の消防力では対処不可能な大災害が起こり、結局は地域の防災力の力量が試される事態となり、多大の被害を出す結果となったようです。

この新刊本では、私が断片的に伺った話が、膨大な資料をベースにドキュメンタリータッチで淡々としかし感動的に描かれています。

今から思うと、頼もしく思えるような、また、今も変わらないなあと思われるような当時の社会の有り様も浮かび上がってきます。被災者同士がお互いに助け合い、縁故者や偶然であった人に家屋や寝具を提供したりしたこと。被災者への食糧配給を行うために町内会のない町々でも町内会を作っていったこと、町会、青年団、在郷軍人会などが上部組織からの指示を待つことなく自律的に活動していったこと、東京府が災害対応で指示不能に陥ったのを見た群馬県庁は、県から人を派遣して東京に県本部を設け救護班を統一整理して府と連絡を取り合おうとしたこと、帝大生の上野での避難民救助の経験がその後のセツルメント活動に繋がったこと、沿道での避難民救護の活動も活発に行われたことなどが具体的に描かれています。

一方で、在郷軍人会などの活動が、流言飛語による朝鮮人来襲情報に振り回され、途中で、自警団化し、被災者救助が滞った事実も描かれています。

関東大震災では、軍が治安維持、技術力、動員力、被災者の公平な救護などの点で民主主義が芽生えはじめた社会においても頼れる存在との印象を与え、その後の時代の推移の底流となったという指摘は、歴史学者ならではの視点となっています。

折しも、首都直下地震の被災予測が中央防災会議で行われています。そう遠くない将来、首都に必ず訪れる大災害に、当時の東京人が如何に対応したのか出来なかったのか、現代の東京人ならずとも、思いを致し、自分自身そして家族、同僚のために備えるべきだと思われます。

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