ムーバスの思想
土屋正忠武蔵野市長は名物市長さんだ。私も7年間武蔵野市民であったことがあり、その仕事ぶりは日々の生活の中で感じてきた。図書館のサービスがよい、老人保健施設がしっかりしている、賑わいが醸し出されている、公園整備が行き届いている、市役所の職員がテキパキしている・・・
多分、そういう市民の印象は土屋市長さんの姿勢の現れなのだろうと思っていた。その市長さんが、分かりやすく、自らの政策の実践録を本にした。「ムーバスの思想」。読むと、目から鱗の記述が沢山ある。
ムーバスというシステムがある。駅の周辺を100円で巡回するバス運行である。何だ、簡単なことじゃないか、という人がいたら、甘い。バスの運行には国の認可がいる。採算がとれるかどうか、民間事業者の眼は厳しい。赤字が出たらどうするか。市がそれを補填することについて議会は何というか。
土屋市長は、駅周辺に住む年輩のご婦人の手紙、「私は体が弱く自転車にも乗れず、かといって近くを通るバスもなく、外出したいのに出来ません」という訴えに心を動かされた。小回りの利く廉価のバスを導入できないか。その思い入れが、国を動かし、バス事業者を動かした。赤字を市が補填する約束であったが、利用者が増え、今では黒字分の半分を事業者が市に繰り入れてくれている。大成功である。
今では、この駅周辺バス運行システムが全国に広がり、市民生活を下支えしている。市民の声を真摯に聞き、それを着実に実践する、市民に根ざしたアイデアと実行力の勝利である。
この地域は、政治的には、民主党の管直人氏が強いところである。実は、土屋市長は管直人氏とは、考え方を異にする政治信条にある。にもかかわらず、選挙は強い。それはとりもなおさず、実績で市民に支持されているからである。市民は賢い。やはり、市長には、市民のためになる政策を実行してくれる人を選ぶのである。地方自治は国政選挙の基準とは異なることはあるのだと、武蔵野市の例を見ていてつくづく思う。
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