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October 11, 2004

白神山地を訪れて

9月の半ば、青森に出かけました。白神登山が目的です。仕事の関係で基本的にプライベートの遠出は控えていましたが、今回、久しぶりの山行きに参加しました。

「不老ふ死温泉」という最近大変人気の高い温泉宿に泊まり、日本海の本州北端の海を見ながら黄金色の露天風呂に入ってきました。
http://www.furofushi.com/links/spa.html

日曜は、早朝から、小雨の中を白神登山に挑みました。
http://www.toonippo.co.jp/kikaku/shirakami/photo_map/shirakami/

地元岩崎村の有志と一緒に登りました。マテ山経由で白神岳まで、往復7時間のコースでした。海岸からすぐの山で、意外なほど簡単に登れるのには驚きましたが、結構傾斜がきつく、鍛えられていない太めの体には結構応えました。それでも地元の方に誉められるペースで下山できました。

ご一緒した日本山岳会会員の地元クライマー西口正司さんの話では、ブナ林の原生林のある白神山地は、保水機能が高く山火事がないのだそうです。「白神山地に山火事無し」という諺もあるのだそうです。

ブナ林は寿命が短く、古木もせいぜい300年なのだそうです。150年くらい経つと、ブナの内部が腐食し、クマゲラが木をつつき穴を開け、それが更に木の寿命を縮めるのだそうです。そうやって木は寿命を終え、新たな子孫が繁栄する空間を残していくのだそうです。

自然の摂理は、人間社会の現象と似ているものだと感じることがありますが、この西口さんの説明は、現在日本社会の桎梏となっている閉塞感と似ているような気がしました。明治以来の中央集権体制を組み直し、地方分権の本格的仕組みを導入することなども、ブナ林の新陳代謝と同じような話なのだろうと思った次第です。さしずめ、クマゲラ役が、三位一体の仕事なのかなあと、思ったりしました。(実は、今の私の仕事はその方面の仕事なのです。)

ブナの実は熊の好物なのだそうです。この実が、4年に一度不作になるのだそうです。そうやって、熊の異常繁殖を抑えるのだとも。不作の年は、熊が里に顔を出すという話です。熊が出るという話を聞くと、西口さんは、今年は山でブナが不作なんだなあと思うのだそうです。

ブナの木は、成長の過程で、同じ時期に生まれた木で最後まで残るのは一本だけというお話も伺いました。同じ高さの木がそうやって淘汰されるのだそうです。弱った木にはツタが絡まり、木の寿命を縮めるのだそうです。ブナ林のバランスを保つための冷酷な自然の摂理がそこにはあるのだそうです。

七戸岩崎村長が、白神山地が世界遺産に登録れるに至った経緯を説明してくれました。白神岳に林道を開設する話があり、自然保護団体中心に反対運動が起きた。ブナの原生林を守れ、と。時の北村青森県知事は、それであれば徹底的に保護しよう、そしてその延長線上で世界遺産登録の話になり、実現の運びになった。概ねそういう話でした。

最近世界遺産登録を契機に、この地域を訪れる人が大変増えているのだそうです。首都圏だけではなく、近畿九州からも絶え間なく人が来ているとのこと。林道が出来ていたらこういうことはありませんでした。

公共事業に頼り大事なものを失うということがこれまではありました。一方で、逆転の発想で、地域の大事なものを守り伝えることが全国的な評価を得て、それがまた地域の人の生きる糧になるという、そういう事例を白神山地の取り組みで伺い知ることが出来たような気がします。

わたしの仕事から言えば、補助金という手段がないと、地域振興や個別政策は全国あまねくきちんと機能しないのだ、という議論に対して、この世界遺産白神山地の取り組みが、その反証になっているかのような思いを抱けた山登りでした。

世俗的な仕事のしがらみの中で生じた体の毒気が全て抜けたような爽快な気分になれました。からだじゅうの痛みにも拘わらず。天候には恵まれませんでしたが、深い霧の中のブナ林は非常に幻想的で、神の領域に入り込んだ気分にもなりました。

もっとも、白神にまで行って、仕事のことを連想するのは、イマイチだと、後でからかわれました。

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